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【M&A】株式譲渡と第三者割当増資の違いとは?

こんばんは。

先日、こんな記事を発見しました。伊藤忠商事のM&A手法がハゲタカファンド並みの手法であるとの記事です。

diamond.jp

しかし、記事の中で少し気になる記載がありましたので、今日は詳しく解説してみようと思います。

ニュース記事で散見されるM&Aの誤認識

上記に取り上げた記事の中でこんな記載がありました。

2009年に伊藤忠が10億円も使わずに筆頭株主となった、女性用高級補正下着メーカーのマルコは、2017年に「ライザップ」を運営する健康コーポレーションが第三者割当増資を約28億円で引き受ける形で子会社化し、静かにエグジットを図っている。第三者割当増資であるため単純計算はできないが、差額は大手投資ファンドもうらやむような300%近いリターンとなる。

出所: ダイヤモンドオンライン

実は上記の文中には誤った記載が2点あります。お分かりでしょうか?

正解は下記の2点です。

  1. 健康コーポレーションが第三者割当増資を約28億円で引き受ける形で子会社化し、(伊藤忠が)静かにエグジット
  2. (伊藤忠が)大手投資ファンドもうらやむような300%近いリターン

どこが間違っているか、解説していきます。

株式譲渡と第三者割当増資は全く違う

ニュースでよく聞くM&Aという言葉の中には「株式譲渡」も「第三者割当増資(三者割)」含まれます。しかし、それぞれの取引は同じM&Aでも全く異なる取引です。

それぞれどのような取引なのでしょうか?

株式譲渡とは?

普段耳にするM&Aは株式譲渡を差す場合が多いかもしれません。

株式譲渡のケースは非常に分かりやすく、既に株式を保有している既存株主が新規株主に株式を譲り渡す代わりに現金を貰う取引を指します。

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  • 株式の流れ:既存株主→新規株主
  • 現金の流れ:新規株主→既存株主

第三者割当増資とは?

次に第三者割当増資とはどのような取引でしょうか?株式譲渡と比較すると少し分かりにくいかもしれません。

第三者割当増資もM&Aの一形態ではありますが、特徴的なのは会社が新しい株式を発行して、新規株主に引き受けて貰うという点です。

株式譲渡は既存株式が旧株主から新株主に移動する取引であるのに対し、第三者割当増資は新しい株式が新株主の元に渡る取引ということにあります。

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  • 株式の流れ:会社→新規株主
  • 現金の流れ:新規株主→会社

伊藤忠の取引を改めて整理

ということで冒頭記事の誤っている箇所2点を改めて見直してみると。

  1. 健康コーポレーションが第三者割当増資を約28億円で引き受ける形で子会社化し、(伊藤忠が)静かにエグジット
  2. (伊藤忠が)大手投資ファンドもうらやむような300%近いリターン

感の良い方は誤っている箇所がお分かりかと思いますが、答え合わせがてらに解説していきます。

ライザップを運営する「健康コーポレーション」が下着メーカ「マルコ」(伊藤忠商事の投資先)が実施する第三者割当増資を引き受けるという取引ですので、下記の通りになります。

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現金はライザップ系列の健康コーポレーションからマルコに移動する取引ですね。

つまり、伊藤忠商事の株式が健康コーポレーションに移動するわけでもなければ、現金が伊藤忠商事に入るわけでもないことになります。 

ここまで来れば、伊藤忠がエグジットしたという記載や、伊藤忠がリターンを得たという記載の違和感がお分かり頂けるかと思います。

*ちなみにハゲタカファンドも羨む300%のリターンという記載も誤っているのですが、それはまだ別の機会に・・・(笑)

終わりに

解説した通り、新聞記事やニュース記事だからと言って、M&Aを正確に理解しているかと言えば、必ずしもそうではありませんので、お気をつけて。

と、この記事を書いて改めてニュース記事を確認して見たら、びっくり!上記の記載は下記の通り、早速訂正されていました

※記事初出時、以下の部分に間違いがありましたので、現状のように訂正・修正しお詫びいたします。
▼ユニー・ファミリーマートホールディングスを傘下に収め、後に100%子会社としている。
▼2010年に格安の約88億円で買収したレリアンでは、2年もたたないうちに傘下にあった食品のアーデンとアパレルのプロシードを売却。これにより、買収額の少なくとも3分の1近くを回収している。
▼一部では、125億円相当の資産価値があるとされていたレリアンを3分の2程度で手中に収めたのは、当時、社長に就任した岡藤現会長の「剛腕」ぶりを物語るものだろう。
▼2009年に伊藤忠が10億円も使わずに筆頭株主となった、女性用高級補正下着メーカーのマルコは、2017年に「ライザップ」を運営する健康コーポレーションが第三者割当増資を約28億円で引き受ける形で子会社化し、静かにエグジットを図っている。第三者割当増資であるため単純計算はできないが、差額は大手投資ファンドもうらやむような300%近いリターンとなる。

リリースされた直後にTwitterで指摘した所だったので驚きました。
さすが、ダイアモンドさんですね。